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執筆者:エンドライン株式会社 デザイン課 ヒラヤマ
賃貸物件の空室対策において、街中で最もよく見かけるのが、赤と白の「入居者募集」というのぼり旗です。管理会社の担当者様やオーナー様は、空室を埋めたい一心でこの旗を立てますが、その裏で「質の悪い問い合わせへの対応」や「入居後の騒音トラブル」といった不安を抱えていないでしょうか。
「家賃さえ払えば誰でもウェルカム」という姿勢は、一見親切なようでいて、実は大きなリスクを孕んでいます。なぜなら、ライフスタイルが全く異なる人々を同じ屋根の下に招き入れることは、入居者同士の摩擦(ミスマッチ)を生み出す原因になるからです。
本記事では、あえて入居者の気質を広告段階で絞り込むことを、「居住環境を守るためのおもてなし」と再定義し、オーナーと入居者が互いに幸せになれる「双方同意型広告」について解説します。

どの物件にも同じような「入居者募集」の旗が立っているため、探している人の目には「ただの景色」として映り、注意を引きません。それどころか、古びた旗が乱立していると、「人気がない物件」というネガティブなシグナルを送ってしまい、本来の魅力が伝わる前に選択肢から外されてしまいます。
「入居者募集」という言葉には、ターゲットがいません。静かに暮らしたい高齢者も、夜通し騒ぎたい学生も、等しく引き寄せてしまいます。もし、「静閑なアパート」に「生活音が大きい人」が入居してしまったらどうなるでしょうか。騒ぐ本人は悪気がなくても、静かさを求める先住者にとっては苦痛でしかありません。入り口でフィルタリングをしないことは、結果として双方に不幸な住環境を提供することになってしまうのです。

そこでご提案するのが、入居してほしい人物像やライフスタイルを明確に打ち出す屋外広告です。これは「人を選ぶ」という上から目線の行為ではありません。「うちはこういう環境を約束します」というオーナーからの宣言(ホスピタリティ)です。
広告の役割を「集客」から「マッチング」へとシフトさせます。物件が提供できる価値と、求めている入居者の条件を掲示することで、それに共感(同意)した人だけが問い合わせをしてきます。内見に来た時点で、「オーナーと価値観が合致している優良顧客」であるため、成約率が高いだけでなく、入居後の満足度も保証された状態になります。
ターゲットを絞ることは、そのターゲットに対する「快適さの保証」になります。
① 「静けさ」というおもてなし
・Before: 入居者募集
・After: 「静かに暮らしたい人、募集。」
効果: これは「騒ぐな」という警告ではなく、「ここは静かな環境が守られていますよ」というメッセージです。騒がしい環境を嫌う良質な入居者にとって、これほど安心できる言葉はありません。
② 「ペットとの暮らし」というおもてなし
・Before: ペット可
・After: 「猫と日向ぼっこできる部屋、空きました。」
効果: 単なる許可(可)ではなく、「動物との暮らしを歓迎します」という姿勢を示すことで、マナーの良い飼い主を引き寄せます。
③ 「コミュニティ」というおもてなし
・Before: ファミリー向け物件
・After: 「『おはよう』が飛び交うマンションです。」
効果: 挨拶やご近所付き合いを大切にしたいファミリー層に対し、「ここは温かいコミュニティがありますよ」と伝えることで、治安の良い環境を維持できます。

この広告手法の優れた点は、物件の弱点(デメリット)さえも、ターゲットによっては「メリット」に変えられることです。包み隠さず伝える「正直さ」は、入居者への誠意として伝わります。
ケース①:部屋が狭い、収納がない
・言い換え: 「ミニマリスト専用。モノを持たない贅沢な暮らし。」
・おもてなしの視点: 物を減らしてシンプルに生きたい若者に対し、「無駄な家賃を払わず、掃除も楽な暮らし」を提案します。
ケース②:駅から遠い、坂道がある
言い換え:「毎日の坂道がジム代わり。健康になれる家。」
おもてなしの視点: 利便性の悪さを隠さず、「駅前の喧騒から離れた静けさ」や「運動不足解消」というポジティブな価値として提供します。
ケース③:築年数が古い
言い換え: 「DIYし放題。自分だけのアジトを作ろう。」
おもてなしの視点: 新築の画一さを嫌う層に対し、「自由に手を加えていい」という許可を与えることで、古さを「クリエイティブな自由」という魅力に変えます。

「入居者セレクト(双方同意型)広告」は、単なる空室対策ではありません。住環境の質を高めることで、賃貸経営を安定させる戦略的なツールです。
管理会社様にとって最大の負担である、入居者間のトラブル対応。「生活音がうるさい」「ゴミ出しのマナーが悪い」といったクレームの多くは、実は入居者同士の価値観の不一致から生まれます。入り口の段階で「静かに暮らしたい人」と明記しておけば、騒音トラブルを起こすリスクの高い人はそもそも応募してきません。「のぼり旗が最初のコンシェルジュ」として機能し、ミスマッチを未然に防ぐことで、管理コストを下げることができます。
「なんとなく入居した人」と「このコンセプトに共感して入居した人」。どちらが長く住んでくれるかは明白です。自分の価値観(静かさやペットとの暮らしなど)が守られている環境は、入居者にとって代えがたい「居心地の良さ」になります。「ここは自分に合っている」という満足感は、長期入居に直結し、空室リスクを遠ざけます。
漫然と「入居者募集」の旗を立てているだけでは、オーナー様に対して「本当に工夫してくれているのか?」という不信感を与えかねません。「この物件は〇〇という魅力があるので、こういう人に刺さる言葉を選びました」と提案することは、管理会社の「物件への愛情」と「企画力」のアピールになります。「ウチの物件のことを真剣に考えてくれている」という信頼は、管理受託の継続や、新規オーナーの紹介にもつながる資産です。

「人を選ぶ」というと冷たく聞こえるかもしれませんが、大切なのは「差別」ではなく「区別(コンセプトの提示)」です。法的なリスクを避けつつ、想いを伝えるポイントを押さえましょう。
「外国人お断り」「子供不可(正当な理由なく)」「女性限定(防犯上の理由などを除く)」など、人種、国籍、信条、性別、身体的特徴だけで排除する表現は、法的に問題になる恐れがありますし、何より「おもてなし」の心に反します。
人そのものではなく、「どのような暮らしを大切にするか(行動・価値観)」にフォーカスして伝えます。
× NG: 「子供お断り」
→ 冷たい排除に聞こえます。
〇 OK: 「大人の隠れ家のような、静寂な時間を大切にしています」
→ 「静かさ」というコンセプトへの同意を求めています。結果として、騒がしくなる恐れのある層は遠慮するようになります。
〇 OK: 「静かな住環境を守るため、足音や話し声にご配慮いただける方を募集します」
→ 入居後のルールを事前に「お願い」として伝えることで、マナーの良い方を招き入れます。
このように、「どのような住環境を提供したいか(コンセプト)」を誠実に語ることが、結果としてトラブルを防ぐフィルターとなります。

・脱・思考停止: 定型句をやめ、ターゲットへの「手紙」を書くつもりで言葉を選ぶ。
・おもてなしの選別: 価値観の合う人だけを招くことは、既存入居者への「安心の提供」になる。
・弱点の転換: 「狭い・古い・遠い」も、ターゲットを絞れば「ミニマル・レトロ・隠れ家」という独自の価値に変わる。
「空室が埋まらない」と焦るあまり、間口を広げすぎていませんか? 逆です。情報が溢れる今の時代、選ばれるのは「誰にでも当てはまる無難な物件」ではなく、「私のためにあるような物件」です。
のぼり旗や看板の言葉を一つ変えるだけで、物件の空気感は変わり、集まる人の質が変わります。「ウチの物件なら、どんな言葉で入居者をおもてなしできるだろう?」そう迷われた際は、ぜひ私たちにご相談ください。物件の隠れた魅力を掘り起こし、最良のパートナー(入居者)と出会うための「求愛メッセージ」を一緒に考えます。
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